「いざという時のために日頃から助け合える関係性が大事」。そう語るのは「ちいきエナジー」代表の篠原光一郎さん。
幅広い世代が参加できる“楽しい防災”を目指し、学生と協力しながら防災活動に取り組んでいます。
「今のままでは間に合わない」から始まった自主防災
篠原さんが防災に本格的に向き合うようになったのは、自身が暮らす地域の現実に直面したことがきっかけだった。
地域ごとに管理されている防災倉庫には、災害に備えた資材が保管されている。しかし実際に見えてきたのは、広いエリアに対して倉庫の数が限られているという現状。
「緊急時に、この距離まで資材を取りに行けるのだろうか」。地域の広さに対して備えが十分とは言えず、「今のままでは間に合わない」と強い危機感を抱いたという。
そこで、より小さな単位での防災を目指し、自主防災組織「中一番組自主防災」を立ち上げた。
篠原さんは「中一番組自主防災」を立ち上げる前は消防団にも所属
資材の管理方法を見直し、防災訓練のあり方も工夫していったが、同時に見えてきたのは「防災を前面に出しても、人はなかなか集まらない」という課題。
訓練の必要性は理解されていても、忙しい日常のなかで、防災が後回しになってしまう人は少なくない。
「どうしたら防災をもっと自分ごととしてもらえるか考えて、『楽しそうだから行ってみよう』と思える場が必要だと思うようになりました」
こうして篠原さんは、楽しく参加できる防災活動を軸に取り組みを広げていった。
いつも明るい篠原さん。「遊び心と若い世代のアイデアが人の興味を引く」と話してくれた
防犯やごみ拾いを日常に
篠原さんが防災を意識するようになった背景には、家族の姿もあった。
「父親が長年続けていた夜の防犯パトロールを引き継ぐ形で、近隣を歩きパトロールをするようになりました。あるとき、犬の散歩をしながらごみを拾っている人を見て、『これを取り入れたらいいのではないか』と思いました」
ごみ拾いは、誰でも気軽にはじめられる。一人でもできるけれど、集まって行うことで交流が生まれ、また一緒に歩くことで地域のパトロールにもなる。
時には意外なごみを拾うことも。ごみを通してまちの表情が見えてくるそうだ
第八小学校で行っている「ハッピーリサイクルプロジェクト」も、そんな思いから生まれた取り組みだ。
参加賞やゲームを取り入れ、子どもから大人まで楽しみながら参加できるごみ拾いを企画している。
「小さなボランティア体験が、もしもの場面で行動力になる」と篠原さん。防災を特別なものにせず、日常の中で経験を重ねていくことが大切だと話す。
毎週木・土曜日の夜に国立駅周辺で行っているごみ拾いは、その“はじめの一歩”として、誰にとっても開かれた入り口になっている。
学生と一緒に活動する「ちいきエナジー」
一橋大学の学生との出会いも篠原さんにとって、大きな転機となった。
市内の喫茶店でたまたま出会った学生から、「くにたちに大学があるのに、くにたちに貢献できていない」という話を聞き意気投合。その学生が立ち上げた、ボランティアサークル「国立あかるくらぶ」を応援することに。
「若い世代と一緒にやることで、地域の空気が変わる」と感じた篠原さんは、学生たちとごみ拾いや防災活動を一緒に行うようになり、立ち上げたのが「ちいきエナジー」だ。
「ちいきエナジー」のキャッチコピーは「“ち”いさな、“い”らいを、“き”ぼうにかえる」
「ちいきエナジー」の特徴は、地域のちょっとしたお困りごとに応え、その謝礼や寄付金を、防災用品の購入に加え、防災イベントやゴミ拾いなどの活動に活用し、地域へ還元する仕組みをつくったこと。
手伝いに行くことで顔見知りになり、そうした関係が地域の中に増えるほど、いざという時に助けが必要な人も見えてくる。
「物理的な支援だけでなく、コミュニケーションを通じて信頼関係を築くことを大切にしています」と篠原さん。
「自分の得意なことで役に立てるのは、やりがいを感じます。ご高齢の方にパソコンの使い方を教えたり、子どもの宿題をみてあげたり、メンバーそれぞれができることで関わっています」と、メンバーの学生。
世代の違う人と話し、まちの課題に触れる経験は、学生にとって大きな学びになっているようだ。
「地域のイベントにも積極的に参加しています。学生たちが考えた企画が実際の場で形になっていく。そのプロセス自体が若い力を育てると同時に、地域を元気にしていると感じます」
と篠原さんは話す。
楽しい場からはじめる防災
防災訓練には人が集まりにくい、そして訓練をしてもなんとなくわかったつもりになって終わってしまう…そんな課題を感じていた篠原さんが学生たちと一緒に企画したのが、「防災カフェ」。
谷保東集会所で開催した「防災カフェ」の様子
毎月、地域を巡回して開催し、防災グッズを試したり、座談会で話をしたり、綿あめなどの楽しみも用意する。
「防災で地域・人とつながろう」をキャッチコピーに掲げ、交流を大切に、楽しみながら防災に関わる場をつくっている。
学生が企画した綿あめは子どもに大人気!
「地域ごと、起こる災害によっても違う備えが必要になってくるので、ぜひ自分が住む地域の防災を知るきっかけにしてほしいです」
地道な活動は、子ども食堂やフードバンク、自主防災組織などとのコラボレーションにも広がり、地域にあるさまざまな取り組みがゆるやかにつながっている。
NPO法人フードバンクくにたちによる炊き出し
「それぞれが持つ知識や経験、ネットワークを持ち寄ることで、参加者の裾野が広がり、地域課題を解決する機会も増えていくと実感しています」。
小学校は“まちの避難所”
篠原さんは第八小学校で避難所運営委員長も務めている。そこで備蓄の足りなさにも危機感を持った。
物資が十分でないだけでなく、実際の運用を想定すると、夜間の廊下やトイレの照明など、見落とされがちな課題も多い。
「避難所の備蓄は、非常用持ち出し袋など個人の備えありきで考えられていることが多い。もちろん備えている人もいると思いますが、避難する時に必ずしも持ち出せるとは限らない。災害で不安を感じている人たちが、避難所で安心して過ごせる備えは必要だと思います」
そこで百円ショップのライトなどを、「寄付」ではなく「預ける」形で学校に配置し、必要なときにすぐ使えるようにした。
「預けるという形にすれば、他の地域で災害が起きたときに、必要な人の元に届けることができる。小学校は各地域の避難所でもあるので、避難時の生活や防犯のためにも、この取り組みを広めていきたいです」

持ち運べるポータブル電源を持つ篠原さん。「買っただけで安心しないで、使い方の相談も気軽にどうぞ」
「ちいきエナジー」で集めた謝礼や寄付金が、こうした物資の購入につながっている。個人で防災活動に参加するのはハードルが高いという人でも、応援の意味を込めて「ちいきエナジー」にお手伝いの依頼をしてくれるケースは少なくないそうだ。
「それぞれができる関わり方で、防災の輪が広がっていくとうれしい」
特別な人だけが担う防災ではなく、日常の中で自然に続いていく防災を広めたいと篠原さんは語る。
身近なことから地域防災力を高める
「防災活動は、最終的にまちづくりにもつながっています。もしもの時に助け合えるまちは、日頃から関係性があるまち。備えることと関わることを日常的に積み重ねていくことが大事」と篠原さんは話す。
ごみ拾いや見守り、ちょっとしたお手伝い。そんな小さな行動が、助け合いの芽になっていく。
日常の身近なことから、防災をはじめてみませんか?

ちいきエナジー
活動の詳細はHP、最新情報はインスタグラムをご覧ください。参加や地域での協力などは下記からお問合せください。
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お問合せ:090-2170-3759(受付時間/10時〜20時)
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