特集シリーズ「今日も元気で」 2024年1月1日 vol.10

福招く、誰もが笑顔に出会える街へ
〜ボッチャ・メダリストに聞く、国立のくらし〜

車いすで大学通りの散策を楽しむ北島 多佳子さんは、いま人気のスポーツ「ボッチャ」の国際大会メダリストです。街に出て人とつながり、人の輪を大事にする。そんな北島さんの国立でのくらしをお聞きしました。

まちでの出会い

通りで、飼い主に抱っこされた灰色と白のふさふさの毛をした小型犬と電動車いすに乗った女性がふれあっていて、女性は嬉しそうな表情をしている。

散歩道でいつものワンちゃんとばったり!

「交友関係がぐっと広がったのは養護学校時代。バスで学校に行って、友だちと一緒に勉強できるのが楽しかったですね」

北島さんが10代のとき、養護学校の義務化によって重度のしょうがいを持つ子どもたちが学校へ通える基盤がようやく整えられた。学校では運動会や文化祭など、みんなで一緒にやる行事がとくに楽しみだったそうだ。

そんなとき、たまたま参加したふれあいスポーツのつどいで国立市の公民館の職員と出会う。それから公民館の行事にも参加するようになり、同年代の仲間がたくさんできた。当時の夢は、「学校を卒業したら自分の家からひとりで行ける所に勤めること」。

公民館のカフェで、若い男女のスタッフたち5人が集まって仲良しそうに微笑みながら、みんなで写真に写っている。中央に車いすにのった若い女性が写っていて、一番手前にいる男性はスプーンで片目をかくしておどけたポーズをとっている。

当時の会報に北島さん(左下)たちの姿があった(写真:国立市公民館提供)

カフェの厨房で車いすに座った若い女性が、ほうろうの注ぎ口が細いポットで、ドリッパーにお湯を注いでいる。

喫茶わいがやでコーヒーを淹れる北島さん(写真:国立市公民館提供)

そして卒業後は、公民館内に新しくできた「喫茶わいがや」の立ち上げスタッフとして活躍する。お店の自慢は、おいしいハンドドリップコーヒー、そしてしょうがいのある人もない人も一緒にお店に立っていることだ。普段はコーヒーや紅茶を淹れて接客、月末には給料の計算をしてメンバーに渡すこともあった。

「喫茶わいがやで出会ったお客さんと道で挨拶したりして、知ってる人が増えて楽しかったですね。いまでもつながりのある人は多いんですよ」

人とつながり、人の輪を大事にする北島さんのもとには自然と人が集まってくる。喫茶わいがやは連日大賑わいだったそうだ。

北島さんは当時の公民館の会報で、「しょうがい者が働くという希望を少しずつ広げていき、しょうがいをこえて自分がどこまでやれるかためしてみたい」と語っている。

スポーツとの出会い

ほどなくして多摩障害者スポーツセンターの教室への参加をきっかけに、新しい挑戦がはじまる。

北島さんはスラロームや車いすサッカーといった競技を経て、当時はまだ競技人口が少なかったボッチャに出会った。

体育館のような場所で、車いすに乗った女性が床に転がっているボッチャの赤や青の球の位置をみながら審判をしている。

ボッチャの審判をする北島さん

ボッチャは重度障害者のために考案され、1984年に世界大会が初めておこなわれた新しいスポーツだ。赤と青のボールを的になる白いボールにどれだけ近づけられるかを競う。ルールはシンプルだが、的が毎回のように動くため「一投ごとに展開が変わる頭脳戦」と言われる。

「ボッチャが性に合っていたんですね」という北島さん。一生懸命練習に打ち込み、全国各地の大会を次々と制覇。韓国でおこなわれた国際大会ではなんと銅メダルを獲得するまでになった。

コンパクトで上等なケースを開いて、ぼってりとした銅のメダルをみせている。
並んだ数々のメダル、画像から11個以上のメダルがあることがわかる。
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ボッチャの大会などで獲得したメダルはたくさん!

ボッチャを広める活動にも取り組み、学校での授業や街なかでの体験教室の講師も続けてきた。こうした功績が認められ、東京2020オリンピックではトーチを渡す役を務めた。今ではボッチャの知名度はずいぶん上がり、しょうがいのある人もない人も参加して交流できるスポーツとして多くの人が楽しむようになっている。

「なんでもできるんだね!」

学校の下駄箱がならぶ昇降口のフロアで、子どもたちに囲まれる車いすに乗った女性。
体育館で、こどものそばで、車いすに乗った女性がボッチャを教えている。
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子どもたちから質問を受ける北島さん

くにたち社協では、そんな北島さんの日々のくらしを知ってもらいたいと学校への出前授業をお願いしている。

授業のはじめにボッチャ体験でメダリストの技を見せると「すごい!」と子どもたちは大喜びだ。でも子どもたちが実際にやってみると「あれ、うまくいかない?」。夢中になって休み時間までボールを離さないという。

そして、北島さんが30年以上続けている和紙ちぎり絵の作品を取り出すと、子どもたちは「どうやってつくったの!」と興味津々だ。

車いすに乗った女性が、手に持った白い紙をちぎろうとしている。手前の台には、はさみと小さな紙がのっている。
板を背景にして、絵馬が写っている。赤い背景に白い辰、龍が描かれており、角にはんこが押されている。紫と白で編まれた掛け紐で結ばれている。
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和紙ちぎり絵で辰年絵馬ができあがり

ちぎり絵で、三輪のあさがおの花が描かれている。青紫と赤紫の花があり、和紙の色のグラデーションを活かして、花弁の雰囲気や遠近感が表現されている。

あさがおの作品は1年がかり。「細かい作業は大変だけど、完成したときはとても嬉しい。次は何を作ろうかなとワクワクします」

「授業に行くと、『車いすの人はかわいそう』と思っていた子どもたちが、『なんでもできるんだね!』と喜んでくれるんです」と笑顔で話す北島さん。

「色んな立場の人を身近に感じることで、困っている人がいたら『手伝おうか?』と声をかけられる子どもたちが増えるといいな」

この道が好き

あるとき、北島さんは「立川のホールでコンサートをやろう!」という企画に参加。大学通りをテーマに作詞した「この道が好き」を応募し、選出された。そしてその歌でコンサートをやることになったのだ。

喫茶わいがやの知り合いが曲をつけてくれ、仲間が演奏してくれることになった。当日はボーカル、ギター、キーボード、ベース、ドラム、コーラスのフルメンバー。北島さんが歌を作ったと聞いて、友だちもたくさん見に来てくれた。演奏後は「私も同じように思っていたの!」と感想を言ってくれる人もいて大盛り上がり。その後、小学校やサロンなど市内各所で歌われて親しまれている。

「この道は好き」は「矢川プラス音楽の日~のど自慢大会~」でも歌われた(和田さん提供)

公園にありそうな木製風のプラスチックベンチの端の方に、ブロンズっぽいプレートがついており歌詞の一節「この道が好き、春になるとピンクになる道、花びら舞い散る中を歩くのが好き」と刻まれている。

歌詞の一節は大学通りの「くにたちベンチ」にも!(国立高校前)

「もっと広がって国立市の歌になるといいな、と思っているんですよ。でももう『国立市歌』はあるから、もっと私の歌が売れないとね。あと駅のホームで流れたらいいな。そういう希望があります。夢は持っておかなきゃね!」

くにたちの大学通りの歩道がまっすぐに写っており、電動車いすに乗った女性の後ろ姿が写っている。
電動車いすのコンパクトな右手側の操作版と手が写っている。背景には地面のイチョウの落ち葉の黄色がみえる。
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「色んな人と出会えるから、この道が好きですね」

さらに詳しくボッチャとは

ボッチャの白い球と赤い球と青い球が並んでいる。赤い球が白い球に隣接しており、近くにもう一球ある。青い球は少しだけ離れている。地面近くの目線でとられた写真で向こうにぼんやりと車いすに乗ったおそらく競技者の足下が見える。

ボッチャってなんだろう?と気になった方は、下記ページにて競技のルールなどが詳しく紹介されています。ご覧になってみてください。

くにたちで体験教室もやってます。ボッチャ体験教室

ぜひ体験教室へ! 2024年度の予定はこちらのURLをご覧ください(2023年度は終了しました)。
https://www.city.kunitachi.tokyo.jp/bunka/sports/8208.html
(国立市市役所のホームページ)

喫茶わいがや(国立市公民館内)

場所:国立市公民館1階ロビー
営業日はSNSをご覧ください。
X(旧Twitter)のアイコン画像X(旧Twitter) @k_waigaya
instagramのアイコン画像Instagram @k_waigaya

ボランティアってなんだろう?

取材陣にふと浮かんだ疑問、「そもそもボランティアってなんだろう?」。その形を探るべく、取材した方々に「あなたにとってボランティアとはなんですか?」と質問させていただいた。もちろん答えは、百人百様。

Q.あなたにとってボランティアとは?

北島 多佳子さん
「ちょっとしたことでも頼める関係。お互いの人柄とか気持ちとかそういうのが伝わる関係がいいですよね。」

ボランティアに関心のあるかたはこちら

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国立市ボランティアセンター
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