特集シリーズ「今日も元気で」 2025年5月1日 vol.18

集おう、食べよう、語ろう 〜西1丁目だれでも食堂〜

食卓を囲み、おしゃべりしながら思い思いの時を過ごせる「西1丁目だれでも食堂」。子どもから大人までさまざまな人が集まります。「待ってましたよ」と民生・児童委員の石川隆子たかこさんが笑顔で迎えてくれました。

「西1丁目だれでも食堂」誕生

集会所に低めの長机が並び、囲むように座布団がしいてある。そこに赤いセーターにチェックのエプロンをして三角巾をかぶった笑顔の女性と、同じく赤いセーターを着てカレーを食べる男性が2人となりあって写っている。

「西1丁目だれでも食堂」で一緒にカレーを食べる石川さんご夫妻。石川隆子さんは1995年から民生委員をはじめた

「地域に顔見知りが増えれば、安心でき、防災・防犯にも役立ちます」。民生委員として地域の身近な相談役を務める石川さんは、活動を通して人と人とのつながりの大切さを実感してきた。

そうしたなか、足が悪くなり西福祉館まで行くのが難しくなった方がいると知った。それまで参加していた会合にも顔を見せなくなってしまい、「それなら、もっと近くで集まれる場所をつくりましょう」と、思いついたのが都営西1丁目アパートの集会所だった。

3階建て団地の手前に広場があり、ベンチも見える。その脇に赤茶色の屋根をした集会所が建っている。

都営西1丁目アパートの集会所。広場も隣接していて、近隣住民の憩いの場になっている

2019年5月、まずは茶話会として始まったが、「ただ話すだけでは物足りない」という声もあり、翌月の6月からカレーの提供を開始。月1回の「西1丁目だれでも食堂」が誕生した。

回を重ねるうちに参加者は増え、現在では30〜40人が集う、にぎやかな場になっている。

集会所の畳敷きの部屋にテーブルが5つくらいの島にわけて用意されていて、それぞれの卓を囲んでカレーを食べたり話をしている。手前の机では炊飯器のごはんをかき混ぜるエプロン姿の女性たちが写っている。

配膳もチームワークでてきぱきと

「西1丁目だれでも食堂」は、石川さんが声がけをしたスタッフ約10名と運営し、食事の準備や片付けなどをしている。

基本のメニューはカレーライス。手際良く野菜を切って、大きな鍋でグツグツと煮込む。料理長の隠し味がおいしさの秘訣だそう。

台所の窓から日が差している。大きな寸胴鍋でぐつぐつとカレーが煮込まれていて、立ちのぼる湯気が光っている。手袋をはめた手でへらを使い焦げないよう混ぜている。

具だくさんの特製カレー。量が多いので、鍋をかき回すのに力がいる

野菜たっぷりで、子どもでも食べやすい辛さのカレーライスは、大盛り歓迎! 「遠慮せずにたくさん食べてね」と空いているお皿を見つけては、石川さんとスタッフの皆さんが、声をかけてまわる。

サッシのガラス戸に囲まれた和室で、周囲の光が差し込み明るい。畳の上では女性たちがあつまって、お茶を片手に談笑している。

片付けの後に一息つきながら、次の企画の話し合い

スタッフの皆さんにとっても、月に一度顔を合わせるこの時間は楽しみのひとつ。「このお漬物おいしいね、レシピ教えてほしいわ」と、料理や家事の情報交換も弾み、スタッフ同士のコミュニケーションが心地よいつながりを育んでいる。

地域への想い

石川さんが目指すのは、元気な地域と顔の見える関係づくり。「ご近所同士のつながりを、大切にしていきたいですね」と語る。

「西1丁目だれでも食堂」は、その第一歩。食事をきっかけに、お互いを知り、声をかけあう関係が育まれていく。

子どもたちの元気な声や、高齢者同士のなごやかな会話――そんな日常の一コマが、地域のあちこちに広がっていってほしいと願っている。

「若い世代にも地域に関心を持ってもらえるよう、まずは自分たちが楽しむことを大切に。自分たちが楽しんでいないと、人も巻き込めませんからね」と石川さん。

赤い服を着て、名札を下げた女性がコップの並んだお盆を手に立っている。笑顔で参加者に飲みものをすすめている様子。

地域のイベントに参加する石川さん

コロナを乗り越えて

活動が軌道に乗り始めた矢先、コロナの感染拡大で、食事の提供を続けることは難しくなり、活動は一時中断を余儀なくされる。

しかし石川さんは、地域とのつながりを絶やしたくないと考え、感染防止に配慮しながら、集会所横の広場でラジオ体操を行う取り組みをはじめた。

屋外での活動は、距離をとりながらも、地域の人たちが顔を合わせる貴重な場となり、「久しぶりにお顔を見られてうれしいです」「元気そうで安心しました」といった声が聞かれた。

そして、コロナが5類へと移行したのを機に、食堂も再開。「またみんなで食べられますね」と、再開を喜ぶ声に石川さんも安心したと話してくれた。

スタッフがコーヒーとお茶菓子を配膳しながら参加者と話をしている。

近況を語り合い会話が弾む

食事のあとのお楽しみ企画

西1丁目だれでも食堂は、毎月第4土曜日に開催されている。メニューはカレーライスを基本とし、季節によってシチューやおでんが登場することもある。

机を囲んで、カレーを頬張る子どもたちと大人。

「子どもが来てくれると活気が出ます」多世代が集まり大家族のようなにぎやかな雰囲気

また、ただ食事をするだけでなく、交流を深める工夫として、すごろくや〇×ゲーム、映画上映なども行っている。

クリスマス会ではビンゴゲームで盛り上がった。景品はスタッフが持ち寄り、バザーで購入したリボンで飾り付け。みんなでつくり上げる温かい雰囲気だったという。

食事は大人300円、小中学生100円。お楽しみ企画の参加は、コーヒー付きで100円。「いつ来ても楽しい」「また次回も来よう」と感じてもらえるように、小さな工夫を重ねている。

室内に置かれた映写機。車輪のホイールの様なパーツが2つあり、幾つかのボタンとつまみがある。年季が入っているように見える。

映画は都立多摩図書館で16ミリのフィルムを借りて上映

民生委員と地域のつながり

民生委員として高齢者や子どもの見守りを中心に、石川さんは人々の暮らしに寄り添って活動してきた。

1人暮らしの高齢者の訪問確認や、困難な家庭状況にある方への支援など、一人ひとりに合わせたきめ細かな対応を心がけている。

「たくさんの人生に触れて、勉強させていただいています。生活背景や価値観も人それぞれ、昔と今では暮らし方も違う。日々学びながら、次に活かしています」と語る。

イベントスタッフの名札を下げ、参加者へ笑顔で景品を配っている女性。女性に抱えられた幼児がそれを受け取っている。

地域のイベントのお手伝いを楽しむ石川さん。通学の見守りや青少年育成活動にも民生委員として参加

民生委員としての経験を通じて、地域とのつながりが深まった。「民生委員になっていなければ、今の自分はなかったと思います」と石川さんは振り返る。

「子どもの同級生のお母さんから誘われてはじめた手話ダンスも、最初は何も分からないまま飛び込んだ感じでした。民生委員をきっかけに地域とのつながりが増え、イベントなどで披露する機会もいただいています」

地域の行事や新しいことに挑戦するなかで、顔見知りがどんどん増え、活動の輪も広がっている。

手話による発表の様子。一人の女性が手話を見せ、もう一人の女性がホワイトボードにかかれたものを棒で指し示している。

地域のイベントで手話を披露する石川さん

「地域の一員として何か役に立てるのはうれしいですし、自分も元気をもらっています」と石川さんは笑顔を見せる。

これからも、無理せず、楽しみながら、地域につながれる場を広げていきたいと話してくれた。


※民生委員・児童委員とは

民生委員・児童委員は、地域に暮らす人たちのために、生活の悩みや子どもの問題などに寄り添い、支援を行う無償のボランティアである。厚生労働大臣から委嘱を受け、地域の相談役として活動している。

すべての民生委員は児童委員を兼ねており、子どもや子育て家庭に特化して支援するのが主任児童委員である。
活動にあたっては、相談者のプライバシー保護が義務づけられている。


カレーの写真。ごろっとした人参とお肉、玉ねぎ、お芋。福神漬けもついている。

西1丁目だれでも食堂

どなたでもご参加になれます(予約不要)

【日時】毎月第4土曜日
食事は12:00~、お楽しみ企画は13:00~14:30
【場所】東京都国立市西1丁目西1丁目都営アパート集会所(都営アパート敷地内)
【参加費】食事代…大人(高校生以上)300円、小中学生100円、幼児以下無料
※お楽しみ企画の参加は100円(飲み物代として)
【お問合せ】国立市社会福祉協議会地域福祉係 042-580-0294

ボランティアに関心のあるかたはこちら

LINEのアイコン画像 ボラセン公式LINE QRコードを読み込んで登録
LINEでは、情報提供だけではなく、ボランティアを活動したいかた、ボランティアを探しているかたの登録フォームをご用意しています。ぜひご活用ください。

国立市ボランティアセンター
電話:042-575-3223
メール:kvc@@kunitachi-csw.tokyo

・国立市ボランティアセンターFacebookページ
・国立市ボランティアセンターX(旧Twitter)

特集「今日も元気で」バックナンバー